公開情報のみでプライベートプレビューの Oracle Database@AWS を掘り下げてみた
いわさです。
この記事は Japan AWS Ambassadors Advent Calendar 2024 の 17 日目の記事です。
AWS re:Invent 2024 の直前に、兼ねてよりアナウンスされていた Oracle Database@AWS が limited preview として登場しました。
Oracle Real Application Clusters (RAC) が AWS でも展開出来るようになるらしいぞということで気になっている方も多いのではないかと思います。
ただし、プライベートプレビュー中のサービスであり実際にまだ環境を触れない状態で、情報も少なくよくわかっていない部分も多いのではないかと思います。
そこで、本記事では AWS 公式ドキュメントや OCI 公式ドキュメント、あるいは re:Invent セッションのアーカイブ動画などから確認出来た公開されている情報を整理しまとめてみます。
Oracle Database@AWS とは
OCI にはクラウド上で Exadata(Oracle Databaseワークロードをハイパフォーマンス、可用性、およびセキュリティで実行する、エンタープライズ・データベース・プラットフォーム)[1]を使う「Oracle Exadata Database Service on Dedicated Infrastructure」というサービスがあります。
この Oracle Database@AWS では AWS コンソールを使って特定の AWS アベイラビリティゾーンに Oracle Exadata Infrastructure を作成します。
Oracle Exadata Infrastructure をそのまま持ってきているため既存のデータベースやアプリケーションをそのまま(あるいは最小限の変更で)AWS に移行出来ます。
以下を見て頂くとわかりやすいのですがコントロールプレーンは OCI 側にあるので、OCI の「AWS リージョン」みたいなイメージです。
ただし、コントロールプレーンの操作(インフラストラクチャの管理)は AWS マネジメントコンソールから透過的にアクセスすることが出来まして、明示的に OCI にアクセスする必要はありません。
AWS にデプロイされた Oracle Exadata Infrastructure は AWS が管理する ODB ネットワーク上にデプロイされるので、ユーザーの AWS ワークロードが存在する VPC とはピアリングして接続する形となります。同一 AZ 内の通信になるので低レイテンシかつデータ転送料金の削減を実現出来ます。
さらに、利用料金は AWS Marketplace 経由で請求されます。
AWS 利用のコミットメントと Oracle Support Rewards に達成目標がある場合はこちらを活用することが出来ます。
Cost optimization[2]
You reduce on-premises Oracle Exadata costs by moving to a cloud-based solution. You also minimize data transfer fees by keeping databases and applications in the same AWS environment. You also get a single invoice through AWS Marketplace, which counts towards AWS commitments as well as Oracle Support rewards. You don’t get a separate bill from OCI.
AWS 利用コミットメントは認識あったのですが、Oracle Support Rewards というのもあるのですね。知らなかったです。
OCI 利用量に応じたベネフィットがあるというところかな。
Customers can accrue $0.25 to $0.33 in rewards for every $1 spent on OCI. Those rewards can be used to pay down your tech software license support bill, even down to zero.
というわけで AWS データセンター上で Exadata を使えるサービスになります。
Oracle Real Application Clusters(Oracle RAC)[3]自体は Exadata 無しでも構成出来ますが、Oracle Database@AWS は Exadata の利用が前提になります。
re:Invent アーカイブ動画:Transform your data with Oracle Database@AWS, featuring State Street (DAT246-NEW)
AWS re:Invent 2024 のブレークアウトセッションの中で Oracle Database@AWS を取り上げたセッションがあります。
公式ドキュメントを補足する情報としてこちらのアーカイブ動画非常に役に立つのでこちらのセッションレポートも軽くさせてください。
このセッションでは Oracle Database@AWS の概要やアーキテクチャについて説明されています。
概要レベルやアーキテクチャの紹介なので、概ね公式ドキュメントと同じ内容です。ゼロ ETL をはじめとする AWS サービスや機能との親和性についても取り上げられています。
ロードマップが紹介されていました。
現在はバージニア北部リージョンの特定のシングル AZ でのみ限定プレビューとして提供されています。
2025 年に GA の予定で、様々な機能拡張が行われる見込みです。
- US の 2つのリージョンでマルチ AZ をサポート
- Oracle Autonomous Database[4] もサポート
- S3へのバックアップ、Zero ETLなどの機能も提供予定
今後のリージョン展開については顧客ニーズに応じて順次拡大するとのことで、具体的なリージョンについては検討中だと述べられていました。
デモ
これはなかなか貴重だと思うのですが、AWS Marketplace からプライベートオファーを使用して、OCI でサブスクリプションの追加を行う様子が紹介されていました。
このあたりは公式ドキュメントでも「オンボーディング」として紹介されていました。プライベートオファーをリクエストして、OCI アクアンとの作成や既存アカウントへサブスクリプションを追加する流れですね。
オンボーディング後は AWS マネジメントコンソール上から Oracle Database@AWS のダッシュボードに作成し、クラスターなどを作成していきます。
まず ODB ネットワークを作成、続いて Exadata infrastructure を作成します。システムモデルとして選択できるのは「Exadata.X9M」で、それぞれデータベースサーバーとストレージサーバーの数を選択します。最小はデータベースサーバーが 2、ストレージサーバーが 3 です。
公式ドキュメントにも記載があるのですが、1 データベースサーバーあたり 126 個の Oracle CPU(OCPU)をサポート、1 ストレージサーバーあたり 64 TB を提供[5]するようです。
Exadata infrastructure がまず作成されました。
データベースサーバーが 2 台あって、合計 OCPU などが確認出来ますね。
さらに続いて、Exadata VM クラスターの作成を行います。
ここで、各 VM ごとの OCPU の数やメモリ、ローカルストレージなどを割り当てしていくようです。
その後は EC2 からデータベースへ接続したりなどが紹介されていました。
公式ドキュメント以上に利用イメージがつくと思うので、こちらの動画は是非見てみてください。
料金
利用料金について気になるところです。
まず、料金表はこちらに記載があります。
「Exadata Database Service vCPUs」と「Exadata Cloud Infrastructure X9M」で料金が発生するようです。
「Exadata Database Service vCPUs」は先ほど割り当てした OCPU の数ごとに、どの程度の時間プロビジョニングされていたかで料金が発生するようです。ちょっと自信がないのが、1 データベースサーバーで 126 OCPU がサポートされ、そこから VM クラスターで割り当てを行うわけなのですが、少なく割り当てた場合に料金がどのようになるのかちょっとわかっていないです。
本家 OCI では最小 OCPU がサーバーあたり 2 OCPU なので同じなのではないかなー?とは思いますが...
「Exadata Cloud Infrastructure X9M」は Infrastructure で構成したサーバー構成に基づくものです。
以下の日本オラクル様のスライドでも紹介されているのを見つけたのですが、Quarter Rack はデータベースサーバーが 2、ストレージサーバーが 3 含まれているものです。
最低構成で「Exadata Cloud Infrastructure - Quarter Rack - X9M」が適用され、追加されたサーバーごとに「Exadata Cloud Infrastructure - Database Server - X9M」と「Exadata Cloud Infrastructure - Storage Server - X9M」が加算されるようなイメージだと思います。(Quarter Rack の料金単価を見てみるとちょうどサーバー 5 台分のようでしたし)
このあたりの料金、実は OCI 本家の Exadata Database Service の料金と同じ単価です。
なので以下の料金ページ記載の計算ツールをそのまま使うとだいたいの金額がわかりそうです。
最小構成(データベースサーバー 2 台で計 4 OCPU)でこれくらいですかね。229 万円/月。
BYOL オプションを使えれば 182 万円/月 でいけそうです。
これもしデータベースインフラに割り当てされる OCPU が全てカウントされるとライセンス込みで最低 4,000 万円/月くらいになっちゃうので、クラスターに割り当てた OCPU だけがアクティブだとカウントされるのだろうきっと、と思ってます。
このあたり詳しい方いらっしゃったらコメントくださいませ。
さいごに
本日は公開情報のみでプライベートプレビューの Oracle Database@AWS についてまとめてみました。
どうでしょう。Oracle Database@AWS について少しキャッチアップ出来ましたでしょうか。
概要とアーキテクチャ、デモ画面、料金データくらいは公開されているので、動かさなくても概ねイメージがついた気がします。